黙って語る

 建物は語る、ただ建っているだけで語る。
その場所で、設計者のイメージを語る。


 建物は語る、その中の空間で語る。
住んでいる人、使っている人、人間味が出てくる。


 建物は語る、語り続ける。
設計者がいなくなろうと、建てた大工がいなくなろうと。
ただ、そこにあるだけで語る。


 建物は語る、しかし語らない。
黙って建っている、ただそれだけだ。
沈黙で語る。
感覚はないかもしれない、だが存在している。


 建物は語る、存在感で語る。
ないもので語る。
誰にも聞こえない、何かで語る。


 自分には、何が聞こえるだろうか?