本を読む…について3

 前回まで


 そうそう、1回めに新書ならさっさと読めると書いたけれど、
それは、間違いだった。
さっさと読むけれども、考えて、思い悩みながら読んでいた。
人の書いた本なんだもの、やっぱり思いが残るのね。
読む側も、ただ流して読むってこともないもんね。


 本を読むことは、人との付き合いに似てる。
出会いがあれば別れもある。
本には、書いた人の思いが詰まってる。
その思いにふれることは、一冊分の思いを受け止めることになる。
読み進めるうちに、親しくなる、けれども、いつかお別れしなくちゃいけない。


「作品との出会いは、別れでもあるんだ。
その別れがつらくて、
ぼくはよく、作品を読むことから逃げてしまうんだ。


でも、作品と向き合って、最後まで付き合うと、
別れたときに、雨上がりのようにすっきりしてるんだ」。


そう、すっきりと。
ほんとは、いろいろひきずってるけどね。
ケンカ別れってわけじゃないからね。
恋に落ちない片思い…のようなもの。


 恋に落ちないけれど、片思いだ。
スキとかキライとかもあるけれど、
落ちない恋だ。
そう、落ちない恋。
ふわふわと浮いたままの、宙ぶらりんの恋。


背表紙にひとめぼれして、
著者の思いに恋をし、
そして、落ちることのない恋心を抱いたまますっきりと別れる。
誰にも告げられない、片思いのまま。
不思議な満足感とともに記憶に残る。


 本とのお付き合いは、不思議だなあ。
あーあ、へーんなの。


それでもまた、次の一冊を手にする。
昨日までの恋の思い出とともに。
そして、新たな恋をする。